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2026.08.05

目視外飛行の注意点

ドローン(無人航空機)を運用する中で、「モニターやFPVゴーグルの映像だけを見ながら撮影や点検を行いたい」「山間部や建物、樹木の影に入り、機体が自分の目から完全に見えなくなる距離まで飛行させたい」という場面は数多く存在します。このような操縦スタイルや飛行条件は、航空法上の専門用語で「目視外飛行」と呼ばれます。

目視外飛行は、ドローンを使った広域のインフラ点検、災害現場での迅速な状況調査、スマート農業における自動散布や農地モニタリング、過疎地や離島における荷物配送など、先進的な産業活用のあらゆる場面で中核となる技術です。しかしその操縦者が自分の肉眼で機体の周囲にある障害物や他機、悪天候の接近を直接確認できないため、空域管理や機体の制御不能におけるリスクが格段に高まります。

そのため日本の航空法において、目視外飛行は「特定飛行」に位置づけられており、事前に正しい法令手続きを行わず、あるいは適切な運航体制を整備しないまま実施することは厳格に禁止されています。

本記事では、国土交通省が公布する「無人航空機の飛行に関する許可・承認審査要領」や「無人航空機飛行マニュアル」をはじめとする公的なガイドラインに準拠し、目視外飛行の定義やスクールでは学べない注意点について解説します。

1. 結論:目視外飛行とは「操縦者本人が肉眼で常時機体を視認できない状態」で行う飛行
国土交通省が定める航空法上の結論からお伝えすると、目視外飛行とは「操縦を行う者が、自身の肉眼によって無人航空機の位置、向き、およびその周囲の安全状況を常時直接監視できていない状態で行うすべての飛行」のことを指します。

ここで極めて重要となるのが「肉眼で直接監視しているか」という点です。どれほど高度なカメラ映像がプロポのモニターに映し出されていても、あるいはどれほど性能の良い双眼鏡を用いて遠くの機体を追いかけていたとしても、それは航空法上「肉眼による直接監視」とは認められず、すべて「目視外飛行」として取り扱われます。

具体的に、国土交通省の審査要領や運用基準において「目視外飛行」に該当すると判断される典型的なパターンは以下の通りです。

遮蔽物による見落とし: 山林、建造物、樹木、鉄塔、道路標識などの陰に機体が進入し、操縦者から機体本体が直接見えなくなった場合。

長距離飛翔: 機体までの距離が離れすぎたことで、肉眼では機体の姿勢(前後左右の向き)や高度、周囲の危険要素を判別できなくなった場合。

モニター・ゴーグルの注視: 送信機(プロポ)に取り付けたタブレットやスマホのモニター画面、またはFPVゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)の映像のみに意識・視線を集中させ、機体本体から目を離して操作する場合。

機器の使用: 双眼鏡、望遠鏡、単眼鏡などの拡大光学機器越しに機体を視認しながら操作を行う場合。

これらの状態はすべて「特定飛行」に該当するため、法律に基づく適切な許可・承認や制度上の適合基準を満たしていない限り、原則として飛行を開始することはできません。

2. 国土交通省ガイドラインに基づく「目視内飛行」と「目視外飛行」の法的境界線
現場のドローンパイロットや事業者が最も注意すべきなのは、「自分では機体を見ているつもりでも、法的には目視外飛行と判定されてしまうケース」です。ここでは、国交省のガイドラインに基づき、目視内と目視外の境界線を構造的に整理します。

① 肉眼視認の原則とメガネ・コンタクトレンズの扱い
国交省の基準において、「肉眼による視認」には視力矯正具である「メガネ」や「コンタクトレンズ」を着用した状態が含まれます。つまり、日常的にメガネやコンタクトを装着してドローンを目視追従している場合は、何の問題もなく「目視内飛行」として認められます。

一方で前述の通り、望遠鏡や双眼鏡、FPVゴーグルなどは「肉眼視認」とはみなされません。これらは視野が極端に狭まることや、遠近感が著しく狂うこと、画面の遅延や通信途絶のリスクを伴うため、画面越しに機体が見えていたとしても法的には「目視外飛行」となります。

② 距離による限界と姿勢の認識能力
機体と操縦者との距離に関しても明確な考え方があります。単に「点のように何かが見えている」だけでは目視内飛行とは言えません。「機体の前後左右の向き(姿勢)が視認でき、かつ周囲に衝突しそうな障害物や他機が存在しないかを肉眼で判別できること」が要件となります。大型ドローンと小型ドローンでは肉眼で姿勢を認識できる限界距離が異なるため、使用する機体のサイズに応じた適切な視認距離を見極める必要があります。

3. 目視外飛行を行うための基本手続きと体制づくり
実際に目視外飛行を実施する際には、航空法に基づき、国土交通省のオンライン申請システム「DIPS 2.0(ドローン情報等用システム)」等を通じて事前に許可・承認手続きを完了させておく必要があります。

① 審査要領に基づく標準的な安全対策要件
国土交通省の「審査要領」において、目視外飛行の承認を得るためには主に以下の安全対策要件をクリアすることが求められます。

機体性能の確保: ホバリング機能、GP/GNSS等による位置保持機能、バッテリー残量警告機能、および通信途絶時に自動で離陸地点へ戻る機能が正常に作動すること。

操縦者の技能・経験: 適切な操縦技術を有していること(無人航空機操縦士国家資格の保有、または一定時間以上の飛行実績と目視外訓練の修了)。

立入管理措置および補助者の配置: 第三者が飛行エリア内に立ち入らないよう、適切な立入管理措置を講じること。または飛行経路下に補助者を配置し、周囲の監視や操縦者への助言を行わせる体制を整えること。

② 技能証明(国家資格)および機体認証制度の活用
現在では、「無人航空機操縦士(技能証明)」の資格を取得し、かつ国の認証を受けた「機体認証機」を使用することで、特定飛行における一部の申請手続きを簡略化・免除する制度が整えられています。目視外飛行をビジネスで頻繁に行う事業者にとっては、国家資格の「目視外飛行の限定解除」を完了させることが非常にスムーズな運用へとつながります。

4. 初心者が陥りやすい現場での誤認パターン
最後に、現場でドローンを運用する初心者が非常に陥りやすい法的な誤認パターンについて解説します。

「補助者が機体を見ているから目視内飛行だ」という誤認
「自分はプロポのモニター映像だけに集中して操作しているが、隣にいる補助者が機体を肉眼でしっかりと見守っているから、これは『目視内飛行』になるはずだ」と思い込んでしまうケースが後を絶ちません。

しかし前述の通り、航空法における定義は「操縦を行う者自身が肉眼で視認しているかどうか」が基準です。補助者が機体を見ていたとしても、操縦者本人が機体から目を離してモニター注視を行っていれば、それは明確に「目視外飛行(特定飛行)」に該当します。

したがって、このような運用形態を行う場合は、事前に目視外飛行としての許可・承認等の必要な対応を行っておく必要があります。

5. まとめ:正しい法令理解と徹底した安全管理で安全な目視外飛行を
目視外飛行(BVLOS)は、ドローンの利便性と活用範囲を爆発的に高める非常に強力な運用形態です。しかし、その反面で高度な安全管理体制と厳格な法令順守が求められます。

正確な定義の把握: 操縦者本人が肉眼で直接監視できない飛行は、すべて「目視外飛行(特定飛行)」に該当する。

適切な事前手続き: 国土交通省(DIPS 2.0等)での許可・承認手続き、あるいは制度適合基準を必ず満たしてから飛行させる。

国土交通省が公開している公式ガイドラインや審査要領を常に最新の状態で確認し、正しく安全対策を講じた上で、目視外飛行の技術と運用に取り組んでいきましょう。

 

「自分の想定している飛行が目視外飛行に当たるのか判断がつかない」「DIPSでの申請や限定解除のやり方を直接学びたい」という方は、ぜひ当スクールにご相談ください。

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