2026.08.03
ドローンの夜間飛行の魅力と注意点
「昼間のドローン操作にも慣れてきたから、夜の街並みを鳥のような視点で空撮してみたい」
「暗闇に浮かぶ工場の灯りを、ドローンで幻想的に捉えてみたい」
ドローンの操縦技術が上がってくると、誰もが一度はそんなステップアップを思い描くかもしれません。昼間とは一変した、光と影が織りなすドラマチックな世界。夜間飛行は、ドローンの可能性と表現力を大きく広げてくれる体験の一つです。
しかし、実際のところ初心者が一発目の飛行でいきなり夜間に飛ばすのは、技術的な観点から見ても非常に困難です。暗闇では視界が制限され、機体の向きや距離感が掴みにくくなるため、日中の基本操作(ホバリング、前後左右の移動、意図した場所への着陸など)が無意識にできるレベルまで慣れておく必要があります。
ドローンの夜間飛行は、「特別なプロだけのもの」ではありませんが、「日中の操作に十分慣れたパイロットが、段階を踏んで挑戦するもの」と言えます。
この記事では、日中の飛行に慣れてきた方が次のステップとして安全に夜間飛行へ挑めるよう、必要な手続きや装備、プロが実践する安全対策、そして夜間飛行がもたらすビジネスの可能性まで解説していきます。
夜間飛行を始めるための要点…
ドローンの夜間飛行は、日中の基本操作にしっかり慣れた上で、国土交通省の許可・承認を取得し、専用の安全ルールに沿って準備を進めることで安全に実施できるようになります。
ドローンは日出から日没までの「日中」に飛行させることがルールとして定められています。ただし、国土交通省へ「夜間飛行の許可・承認申請」を行い、安全基準を満たしていると確認されれば、指定された条件のもとで夜間でもドローンを飛ばすことが可能になります。
夜間は周囲の視界が大きく制限されるため、機体の位置や姿勢、電線や樹木といった障害物を視認することが日中よりも難しくなります。そのため、申請手続きに加えて、機体への灯火や配置人員の確保といった具体的な安全対策が必要となります。
日中の飛行経験を重ねて操作に自信がついた段階で、こうした手続きと安全装備の準備を一つずつ整えていくことが、夜間飛行への着実なアプローチとなります。
メインコンテンツ(深掘り):具体的に必要な理由と現場の状況
日中の操縦に慣れてきたパイロットが、なぜ「夜間」という次のステップに進む際に慎重な準備を求められるのか。その技術的・環境的な理由と、夜間空撮が持つ魅力について解説します。
1. なぜ日中以上の技術と慎重さが求められるのか?
夜間飛行における最大のハードルは、「目視による状況把握が難しくなること」です。日中であれば自然とできている操作や確認が、暗闇の中では難易度を一気に上げます。
機体の向き(方向)を見失いやすい: 距離が離れると、ドローンのLEDランプだけでは機体がどちらを向いているのか判別しづらくなります。日中の操作に慣れていないと、スティック操作と機体の動きが逆になり、パニックに陥るリスクが高まります。
暗闇に溶け込む障害物: 電線、細い枝、建物のフェンスなどは、夜間になるとほぼ見えなくなります。日中以上に、事前のロケハン(現地調査)とコース確認が不可欠です。
距離感の錯覚: 周囲が暗いと、対象物や地面との距離感が正しく掴めなくなります。着陸時に思ったより早く着地してしまったり、逆に高さを誤認したりすることがあります。
これらの理由から、まずは日中の飛行で「送信機の操作を体で覚えている状態」を作ることが、夜間飛行に挑戦するための実践的な前提となります。
2. 夜間飛行がもたらす表現と映像表現
一方で、操縦技術を身につけたパイロットにとって、夜間空撮には日中では得られない魅力が存在します。
光の軌跡を捉える表現: カメラのシャッタースピードを遅くして撮影(長時間露光)することで、道路を走る車のヘッドライトやテールランプが光の筋となり、未来的で動的な写真を撮影できます。
工場夜景や構造美の撮影: 暗闇の中に複雑な配管やプラントの灯りが浮かび上がる「工場夜景」は、上空からの視点と組み合わさることで非常に幻想的な映像となります。
街の灯りとコントラスト: 都市部やイベント会場などを高所から捉えると、街全体の灯りが綺麗に広がり、スケール感のある映像を作り出すことができます。
こうした映像表現は、プロのクリエイターやPR動画の制作においても需要が高く、技術を磨く大きなモチベーションとなります。
3. 許可申請と現場での準備の流れ
夜間飛行を行うための「許可・承認申請」は、現在「DIPS 2.0(ドローン情報基盤システム)」を通じてオンラインで行うことができます。
申請の際には、「操縦者が一定以上の飛行実績を持っているか」「夜間飛行に必要な灯火が機体に備わっているか」「万が一の事態に備えて補助者を配置するか」など、具体的な体制を入力していきます。
日中の操作に慣れてきたら、いきなり本番の撮影を行うのではなく、まずは安全な広い場所や、夜間講習を実施しているドローンスクールなどで「暗闇での機体の見え方」を体感してみるのがスムーズなステップです。

初心者が陥る罠…
日中の操作に慣れてきた頃こそ、油断や誤認によるトラブルが起きやすくなります。夜間飛行において特に注意すべき点や、過去の失敗例から学べるリスク回避策をまとめました。
1. 機体のポジションを見失う「空間認識の喪失」
よくある失敗例: 日中の感覚で「少し遠くまで飛ばしてみよう」と操作した結果、機体のLEDランプが小さな光の点にしか見えなくなり、前後の向きが分からなくなった。焦って操作を入れたことでさらに離れてしまい、復帰に時間がかかった。
注意点と対策: 夜間は、機体の向き(ヘディング)を見失う「ロスト」が起きやすくなります。目視できる範囲を日中よりも狭く設定し、無理に遠方へ飛ばさない判断が必要です。また、万が一向きが分からなくなった場合に備えて、自動で離陸地点に戻る機能の設定をあらかじめ確認しておくことが推奨されます。
2. モニター映像への「集中しすぎ」による衝突
よくある失敗例: 手元のモニターに映る美しい夜景に没頭してしまい、機体本体から目を離し続けていた。障害物センサーが検知しづらい細い枝や電線に気づかず、接近してしまった。
注意点と対策: ドローンの障害物検知センサーは、暗闇や暗い被写体に対しては精度が低下したり、作動しなくなったりする場合があります。「センサーがあるから大丈夫」と過信せず、常に目視確認を怠らないこと、あるいは補助者に目視監視を任せる体制を作ることが重要です。
3. 「日没時間」の解釈ミスによる無許可飛行
よくある失敗例: 「まだ外が薄明るいから大丈夫」と思って飛ばしていたが、暦上の「日没時刻」はすでに過ぎており、結果的に無許可で夜間飛行を行ってしまった。
注意点と対策: 夜間飛行の対象期間は、「国立天文台が発表する日没から日出まで」と明確に定義されています。自分の感覚で「明るい・暗い」を判断するのではなく、その日の正確な日没時刻をあらかじめ調べておく必要があります。許可を得ていない状態で日没時刻を1分でも過ぎて飛行させると法律違反となる可能性がある為、注意が必要です。
4. 暗所でのメンテナンス不備
よくある失敗例: 暗い場所で準備を行ったため、プロペラの装着ロックが不十分だったことや、バッテリーの微細な浮きに気づかず飛行させ、途中で接触不良や不具合が発生した。
注意点と対策: 準備作業を行う場所には必ずヘッドライトやランタンを用意し、手元を明るく照らした状態で点検を行います。また、飛行前の日常点検項目をチェックリスト化し、飛行日誌(点検記録)をつけながら一つずつ確認する習慣をつけることで、暗所での見落としを防ぐことができます。
こうしたリスクを理解し、準備を怠らない姿勢が、安全な飛行へとつながります。
ここまで、ドローンの夜間飛行について、基本となる考え方、法規制や手続き、現場でのノウハウ、注意すべきリスクについて解説してきました。
最初は「難しそう」「リスクが高い」と感じる部分もあったかもしれません。しかし、これらは事故を防ぎ、パイロット自身や周囲の安全を守るために用意されているルールと手順です。
ドローンの夜間飛行は、「まずは日中の飛行練習を重ねて十分に慣れること」、そして「ルールに基づいた申請と準備を一つずつ整えること」という段階を踏むことで、着実に挑戦できるようになります。日中の操縦に慣れてきたら、ステップアップの目標として夜間飛行を目指してみてはいかがでしょうか。
段階的な練習と正しい知識の習得によって、夜間の空という新しいフィールドを安全に楽しむ準備を整えていきましょう。
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